生涯歯医者、山内浩司も歯医者になって四半世紀が立ちました。今回は私と歯科インプラントとの変遷とでもいうのかな、そんなものを書いておこうと思います。
私が実際にインプラントを初めて触ったのは1995年の田町と品川駅の間にあるチサンホテルのレクチャールームだったように記憶しています。当時のITI インプラント、現在のストローマンインプラントのサフィティスケートセミナーでのことです。ITIというスイスのインプラントからスタートした私は、コニカルシールデザインやマイクロスレッド、タイユナイト、プラットフォームスイッチと今では当たり前のことを1996年にはすでに盛り込んだスウェーデンのアストラテックインプラントの日本の初期メンバーとして翌年からスコーネスタディーグループ等にも参加しながら実際に臨床に入りました。当時は一体インプラントってなんやねん?、とか、そんなのん人様のお口の施させていただいていいもんなんか?、という時代でした。
しかし私は大切な目の前の患者さま方に噛める、笑える、入れ歯じゃない喜びを味わっていただき、多くの「ありがとう」を聞かせていただく機会に恵まれ、この治療法は必ずや歯科治療の選択肢の一つになりうると感じました。
少し当時を思い起こすと、インプラント治療を行う歯医者の議題はマテリアルのインプラント本体に集中しておりました。どこどこのなんとかっていうシステムのほうが良いとか、チタンはどんなタイプが安全であるのだ、とか、骨と接するサーファイスはこれだからよいのだ、とかでした。実際私もそんな議論が好きでしたし、いろんな勉強会にも顔を出させていただきました。
私が勤務医時代に院長が行っていた○セラのサファイアブレードインプラントがどうもしっくり感じなかった私にとって、チタン製のスクリューインプラントはとてもフィットしていました。
その後私たちの議題は、インプラントフィクスチャー本体からアバットメント、その接合様式、などへ変遷していきました。2000年を迎えるあたりだってでしょうか。この頃から様々なインプラントメーカーが林立してきて様々な各社のメリットやアドバンテージを謳うようになってきました。
わたしは骨レベルのマイクロギャップやそのことによるコンタミネーションが嫌で、極力インターナル構造のアストラテックやスクリューベントインプラントを使用していました。しかしこの様式のも利点と欠点が潜んでいました。コニカルシールやフリクションフィットがコンタミネーションを抑えると考えていた私でしたが、実際にこのコネクティブに過大な力が掛かるとフィクスチャーが破損するというケースに複数遭遇するに至りました。チタンという金属でも、力に負けることを知ったのです。
当時世の中には、1ピースインプラントとか2ピースインプラントとか、んじゃーどっちがいいんだ、とかという議論に差し掛かり始めました。私は今でも2ピースインプラントを多く用いますが、その理由は上部構造、すなわち歯の形になる部分に自由がきくからです。
しかし、ボーンレベルにコネクトを設置する利点は長期的にはいかがなものなのかな、という疑念を持つようになっていました。実際に目の前の患者さまに、「インプラント処置はとてもうまくいっておりましたが、インプラントの本体が破損したため、現在のものを撤去して新しく入れ直す手術が必要です。」なんてなかなか平常心ではお伝えできません。とても残念なことですもんね。
ということで、力による負担や、感染のリスクが最も高いインプラントフィクスチャーとアバットメントの接合部(コネクト部)をボーンレベルではなくティシュ―レベル(歯茎に近い歯周ポケット部)のインプラントがよいと考え、ジンマー社のスイスプラスインプラントを選択し、多く使用させていただくようになりました。この考えは今でも正しいものと感じています。
とまあ、どんなインプラントをおすすめして差し上げることが患者さまにベターなのか考えながら医学は進歩していきます。現在ではケースや患者さまのご都合にも合わせて様々なシステムを用いるようになりました。
また、インプラントを植立する場所も様々な変遷をしてきましたが、今ではその昔不可能といわれた場所でも、骨を作る技術が進歩し、植立方法も様々なマテリアルも開発され現在のインプラント時代になったわけです。奇しくも20年前に私が感じたとおりにね^^
私自身この先もインプラントの治療は必要な選択肢であると確信しています。ただしインプラント至上主義ではありません、あくまでも皆様にとってのベターライフはなーに? んじゃーインプラントもいいよね! ということであればの歯科治療の一つの選択肢です。入れ歯もクラウン・ブリッジも基本と基準と技術が重要なように、安易なインプラント治療が様々な事象を起こしてしまっている事実もあるようですね。
今後の私は・・・、さらに進歩していきます。総合歯科診断を是非この歯科の世界にルーティン化できれば素晴らしいと考えています。すべての口腔、顎、歯、歯茎、舌、虫歯、歯周病、口臭etc. きちっとした基準を持って診断、治療やメンテナンス計画の立案、という過程を経れば、きっときっと長く安心して使える口腔機能を提供できると思っています。
人生90年、されど健康寿命はそのマイナス10年といわれています。まずはこの余命の長さのため、以前ではあまり問題視されていなかった噛む力による築年の弊害をある段階で今一度再構築し、再び元の骨格や機能に合わせた形に修復し、健康長寿で色々なことにチャレンジや造形を深めることなどをし長寿が楽しめる世界になるべきと思います。どうか私と一緒に楽しく歳を取って行こう、なんて殊勝な方、Ld では現在募集中です。
もしかして最後の10年で人生決まるかも、です。ご家族やご友人と笑って話して食事して、「あーいい人生だったな。」なんて思えるのならいいですね。もちろん私もどうなるのかなんて未来のことなのでわかりません。でも一歯科医師として私の技術や経験や考え方がその、「あー・・・」に寄与できるならば本望です。
2014年10月19日 カテゴリ:インプラント 歯科治療, 歯科医師 歯医者 山内浩司